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第一次予選レポート


第一次予選は、9月27日、28日の2日間にわたって、東京オペラシティコンサートホールでひらかれた。今回は、新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が発令されているということもあり、無観客での開催となった。

第一次予選参加者は14名と発表されていたが、2名の辞退者が出たため、実際の参加者は12名となった。日本人6名、ロシア人2名、イギリス人1名、ドイツ人1名、ブラジル人1名、フランス人1名。うち女性は2名。コロナ禍により厳しく入国制限が行われているなか、2週間の自主隔離等を経て、これだけ様々な国から参加者が集まったのは快挙といえるだろう。

27日と28日、2日間で6人ずつが登場し、オーケストラとの初めての顔合わせでいきなりベートーヴェンの交響曲第2番を指揮する。演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。参加者は、マスクをして、マイクをつけて(それによってオーケストラにしゃべることが客席でも聞ける)、指揮する。一人の持ち時間は25分で、交響曲第2番の4つの楽章の指定の箇所を振る。途中、演奏を止めて、オーケストラに指示を出したり、問題のある個所をやり直したりしてもよい。つまり、演奏そのものだけでなく、リハーサルの進め方や着眼点も審査の対象となる。

東京フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:三浦章宏)の演奏水準の高さ、協力的な姿勢は特筆されるべきであろう。彼らは、最初の参加者から安定感のある演奏を行い、最後の参加者まで(ベートーヴェンの交響曲第2番を12回!)フレッシュな演奏を繰り広げ、第一次予選を適正に進める上での最大の功労者となった。

通過者講評 音楽評論家:山田治生


第一次予選参加者12名のうち、7名が第二次予選に進むことになった。全員が20歳代。第一次予選では、指揮の仕方やオーケストラとのコミュニケーションの取り方はもちろん、古典派音楽、ベートーヴェン、そして彼の交響曲第2番をどう捉え、どう再現するかが問われた。

ここでは、第一次予選での出場順に、通過者の演奏を振り返りたい。トップ・バッターは、石坂幸治。まずは、第1楽章始めから提示部の最後までを止めずに演奏。そのまま楽章の最後まで聴きたいと思ったほどの好調な滑り出し。石坂は、自然な指揮で、ダイナミックスもはっきりとつける。オーケストラの音をよく聴き、よく味わっているようにみえる。そして、軽快さや弱音表現へのこだわりをオーケストラに伝えていた。

米田覚士はまだ25歳であるが、思い切りが良く、かつ、その解釈は非常に練られていた。彼は音楽を大きく捉えているが、同時に細かい音符にも「愛情を持って」と指示。第4楽章冒頭のsfのトリルにもこだわる。また、ベートーヴェンの意図したサプライズもうまく演出しようとしていた。米田の指揮には、音楽の姿がよく表れていた。

イギリスのバーティ―・ベイジェントは、第1楽章から推進力があり、そのスピード感が作品にふさわしい。ラルゲットの第2楽章でも音楽が停滞せず、ビートが感じられる。第3楽章でも細かいことにとらわれ過ぎず、前へ進むところが良い。第4楽章も快適なテンポ。音の強弱、硬軟のコントラストをはっきりとつける。今どきのベートーヴェン演奏といえるのではないだろうか。

23歳のルカ・ハウザーはドイツから。振り方はまだ洗練されていないが、音楽の内容は充実している。左手をうまく使う。強弱をはっきりとつけて、良いテンポ。第2楽章では室内楽のような音楽を求める。

同じく23歳、ブラジルのジョゼ・ソアーレスは、第1次予選の通過者のなかで最年少。力まず、弾む感じの指揮が良い。軽やかで小気味の良い音楽作り。ただし、第2楽章ははっきりと振って、大きなカンタービレ。後半楽章は快適なテンポ。オーケストラに指示を出すときに、歌ってみせるのは、好感が持てる。

フランスのサミー・ラシッド。彼はチェリストからの転身。2016年にカルテット・アロドのメンバーとしてミュンヘン国際音楽コンクールで第1位を獲得した。かなりの長身であまり細かくは振らない。指揮のボキャブラリーはまだそんなに多くないように思われた。

第一次予選の最後はロシアのミハイル・メリング。彼はクラリネットからの転身。美しくまろやかな音楽作り。指揮はぎこちないように思われるところもあるが、表現意欲に満ちている。

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第一次予選映像


映像は、YouTubeチャンネルにて公開しております。(最新映像、前回18回コンクールの映像も配信中)
https://www.youtube.com/channel/UCkd1kHNHJsIdOWQnQFBvYtQ