2012
16th
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入選者インタビュー

コンクールについて

  • ─ コンクールの第1次予選(First Preliminary Round)を振り返ってみて、第1次予選の全体像や、ご自身の指揮についてお聞かせ願えますか?

    第1回予選の開始前から、参加者全員に対して求められる条件は明快に示されていました。限られた時間内で、リハーサルと演奏両方の準備をするのは、挑戦でした。演奏者はレパートリーを暗記して、どの部分を取っても、細部に至るまで指揮者に従ってくださって、卓越したオーケストラでした。一緒に仕事をすることが出来たことは触発であり、喜びでした。

  • ─ コンクールについて、師匠からどんな助言を受けましたか?どこに最も力点を置かれましたか?

    音楽に集中することと、オーケストラとのコミュニケ―ションです。

  • ─ コンクールに当たって、具体的な準備はされましたか?

    作品を深く掘り下げ、私なりの捉え方に到達して、レパートリーに体系的に取り組みました。根気と着実さが求められる、亀の歩みのような作業でしたが、内省と自己啓発に満ちていました。

  • ─ 第1予選での指揮開始直前の心情や、胸中について教えて頂けますか?

    心と体が音楽で満たされ、音楽を身体全体に感じていました。作品の一瞬一瞬が、全てぴったりと合致しました。音楽が余すところなく最大限に響くよう、呼吸、そしてテンポに身を任せることに集中しました。

  • ─ コンクールが終了した晩は、どのように過ごされましたか?

    まだコンクールのことを思いふけっていました。自分の指揮、新しい出逢い、審査員の講評など、その日のあらゆる出来事を反芻しました。上手く出来た箇所や、改善すべきだった点を分析しました。

  • ─ なぜ、選択肢として与えられた3作品から、あの曲を選ばれたのですか?

    ベートーベンの交響曲第3番「英雄」を選んだのは、あの中で一番やりがいのある作品だと思ったからです。この作品の指揮を執るのは夢でしたし、ちょうど良いタイミングだと思ったのです。

  • ─ 課題曲の指揮で、特に気を付けていた点は何ですか?指揮を執る最中は、何を思われていましたか?

    私の作品の捉え方で、オーケストラを鼓舞することを目指していました。音楽では、主旋律の性質やスタイル上の問題を引き出し、作品全体を通して肝要な構造を組み立てることに集中しました。

  • ─ 衣装は、予選・本選のために特に選んだものでしたか?それとも、指揮を執る時に普段から着用している衣装だったのでしょうか?

    毎回、最終的な決断を下したのは前日でした。普段、指揮を執る際に着ている、異なる衣装を幾つか持ち込んでいましたが、選択に当たっては、コンクールやコンサートホールの雰囲気によって影響を受けました。

  • ─ 指揮を執る際、身に着けるラッキーアイテム(お守り、縁起物)はありますか?あるいは、コンクールに先立って、縁起かつぎとして食べるものや、決まってすることはありますか?

    ステージに向けて、精神的な準備をします。これが私の指揮の土台です。

  • ─ 入賞者が発表された時のお気持ちはいかがでしたか?あの時と今とで、感情の変化はありますか?

    審査発表は、自分で結果をどうすることもできない瞬間ですから、いつも緊張します。

  • ─ 初舞台となるコンサートを終えての心情を伺えますか?コンサート終了後、指揮者として環境に変化はありましたか?

    活気に満ちた日本の方々から、触発を受け続けています。オーケストラは異なる演奏家で構成されているため、音楽の作り方は、オーケストラにより独自のものがあります。異なるオーケストラから同様の音を出すために、異なる手法が要求されることが往々にしてあります。

指揮者について

  • ─ 指揮者になりたいと思われた理由は何でしたか?

    私が持っている全ての能力が合わさった職業であり、自身の可能性を発揮できると思ったからです。

  • ─ 指揮者になるために、どのような苦難に直面されましたか?その一方で、経験された喜びはどのようなものでしたか?

    指揮者は、常に音楽や文献を学び、自己や他者について研鑽を怠ることなく、音楽家として、また人間として成長すべく精進する必要があります。そのどれにおいても、指揮者は強く自己を信じることが必要です。
    一番の喜びは、他者とともに音楽を創作し、聴き手を鼓舞できることです。

  • ─ 指揮者として、常に心がけていることや、気を付けていることは何ですか?

    指揮者は、自分が指揮を執る音楽を知悉していなければなりません。音楽が大局的に流れつつも、細部に至るまで、指揮者と一心同体となって流れてくるようでなくてはなりません。自分より音楽を優先させることが重要です。

  • ─ リハーサルは、どのような環境で行なっていますか?

    どんな環境でも楽譜を学ぶことはできますが、私は自由に想像を巡らせることができる静かな場所の方が好きです。十分な光があって楽譜が読みやすく、手の動きをチェックできる鏡があると良いですね。段階によっては、作品全体や一部をピアノで弾いて、想像力を要する作業に役立てるのが好きです。

音楽について

音楽は、常に生活の一部。
それ自体が人生の理由であり、目標です。

  • ─ (ジャンルを問わず)好きなオーケストラ、作曲家、作品について伺えますか?

    毎日、新しいオーケストラ、作曲家、作品を発見しています。知っていたつもりだったオーケストラ、作曲家、作品についても、日々、新たな発見があります。一切が変動していますから。

  • ─ 幼少期の音楽の思い出はありますか?

    音楽は、常に生活の一部でした。子供の頃は、現実に対処する解決法でした。困ったことがあると、その度に音楽の演奏や鑑賞を始めるのですが、そうすると、問題が消え去っていくのです。音楽は、それ自体が人生の理由であり、目標でした。

  • ─ もし指揮者になっていなかったら、どんな職業に就いておられたと思いますか?他にやってみたかった仕事はありますか?

    チェロ奏者として、オーケストラで演奏していたと思います。

  • ─ 将来の計画や目標、またその実現への決意についてお聞かせ願えますか?

    特定のレパートリーに絞って、深い洞察をもって、長期間のコンサートをやり通したいと思っています。オーケストラとは、長期にわたる関係を築きたいと強く念願しています。それによって、そうしたコンサートの実現も可能になると信じています。国際的な活動も、体験や知識を広げることができますし、それにより、人々に対し、さらに私から届けることが可能になりますので、重要です。

  • ─ 次回の東京国際音楽コンクール指揮部門への参加を検討している人達へのアドバイスをお願いできますか?

    レパートリーの準備を入念に行ない、新しい指揮の体験に対して心を開いて下さい。

プロフィール
マヤ・メーテルスカ

1983年生まれ。ワルシャワのショパン音楽アカデミーで指揮の音楽修士号と音楽芸術博士号を取得。音楽修士号の取得においてはアントニ・ヴィトに師事し、チェロを学ぶ。ヨルマ・パヌラ、ユーリ・シモノフ、デイヴィッド・ジンマン(アスペンのアメリカン・アカデミー・オブ・コンダクティング)、マリン・オールソップ、ジェームズ・コンロン、レイフ・セーゲルスタム(シベリウス音楽院)の各氏に師事し、それぞれのマスタークラスを受講。2006年にワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団でデビューを飾った後は、ポーランド国内のあらゆるオーケストラから再三の招待を受ける。またフィンランド放送交響楽団、デンマーク国立交響楽団、ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団などを指揮。現在はワルシャワ室内歌劇場の指揮者を務める。