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<19th> 入賞者記者発表会レポート

2021年10月4日午後1時30分から、第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉の入賞者記者発表会がオンラインで行なわれた。

まず、前日に東京オペラシティコンサートホールで開催された本選のダイジェスト映像が紹介された。

 

次に、一般財団法人民主音楽協会代表理事で、同コンクール組織委員長の伊藤一人氏が挨拶を述べた。続いて、この会見の出席者が紹介された。

会見に臨んだのは、同音楽コンクールの審査委員長を務める尾高忠明氏をはじめ、ライナー・キュッヒル氏、ユベール・スダーン氏、広上淳一氏、高関健氏、そして実行委員の桑原浩氏と宮澤敏夫氏。そして、シャーン・エドワーズ氏、オッコ・カム氏、準・メルクル氏がオンラインで参加した。

 

審査結果も報告された。今回、応募があったのは世界49か国地域で、過去最多の331名。書類・ビデオの審査の結果、6か国12名が第一予選に挑み、そのなかから7名が第二次予選へ進んだ。そして4人が本選で演奏し、第1位はジョゼ・ソアーレス(ブラジル)となった。第2位はサミー・ラシッド(フランス)で第3位はバーティ・ベイジェント(イギリス)、日本の米田覚士が入選。本選出場者はすべて20代であったことも告げられた。

 

続いて、尾高氏が挨拶した。

「今回は、去年のコロナが始まってから大変なことになってしまいました。中止もやむを得ないとも考えました。1年延期も考え、オーケストラを2022年まで押さえました。しかし、組織委員会の英断で開催すると決まりました。そのあとも日本の状況もどんどん悪くなっていたので、やはり中止かと思っていたのですが、そのなかでみなさん、そして審査委員も先生方もいらしてくださり、涙が出るほど嬉しかったです。

3人にお願いしたい。私は指揮を始めて50年になりました。でもブロムシュテットさんは90歳代です。ですからあなた方はこれから70年間頑張っていただけるものと信じています。おめでとうございます」

 

 

 

続いて、入賞者が挨拶した。

 

バーティ・ベイジェント「初めて来日できて幸せです。このコンクールで3位をいただき、とても光栄に思います。そして、オーケストラのみなさまにお付き合いいただき、私たちにとって良い体験になったことを感謝しています。本選で演奏したシュトラウスは、長年やってみたかった作品でしたので、指揮させていただき光栄です」

 

 

 

サミー・ラシッド「過去1週間、そしてその前の2週間の隔離期間を過ごすなかで、素晴らしい経験ができました。特にコンクールの運営が素晴らしく、隔離期間中も手厚くサポートしていただき、私たちは演奏に集中できました。私はオーケストラを指揮した経験があまりなく、予選・本選と素晴らしいオーケストラと演奏させていただいたことを感謝しています。フランス人として、フランス人の作品を海外のお客さまに聴いていただけたこと、そして指揮させていただいたことを感謝いたします」

 

 

 

ジョゼ・ソアーレス「今回のコンクールは、ユニークな経験でした。国際コンクールに参加させていただくだけで、とても光栄です。まずは、予選以前の、コロナの2週間隔離期間を耐え抜くことでした。このような大きなコンクールは初めてですので、そのなかで認めていただいたことを嬉しく思います。さまざまなレパートリーを勉強させていただいたことも、幸せなことです。そしてコロナ禍で大変な時期、私の国(ブラジル)でもオーケストラが苦しんでいますが、このような機会をいただけたことに光栄に思っています。私たちのミッションは、音楽から得られる幸せを皆さんとシェアすることだと思っています。これからも頑張っていきたいと思います」

 

 

 

 

続いて、音楽ジャーナリストの池田卓夫氏が代表し、いくつか質問した。そのなかで、池田氏は、リハーサルでの言語は英語で一本化した方が良いとの意見があったことを紹介した。それについて、尾高氏は会見の後半にこのように答えた。

「英語であろうと日本語であろうと良いのです。イギリス人のジョン・バルビローリがベルリン・フィルを指揮したとき、ドイツ語で喋ろうとしたけれど、そのドイツ語はひどかったそうで、オーケストラから「母国語の英語でいいよ」と言われたそうです。でも、彼は英語を使わず、練習番号だけを指示し、あとは自分で歌ってみせました。また、彼はチェロ奏者でもありますので、チェリストから楽器を借りて弾いて指示をしたそうです。こうして、すばらしいマーラー《交響曲第9番》を演奏した逸話もあります。だから、言葉が巧みで良いことばかりを言って、何も出てこない指揮者にはなってほしくないのが、私の個人的な意見です」

 

 

その後、オンライン参加者の質疑応答が行なわれた。そのなかで、「入賞者の方3名に短く質問したい。10年後、どんな音楽家になっていたい?」との読売新聞の松本良一氏の質問が興味深かった。

 

バーティ・ベイジェント「憧れている指揮者のひとり、ハイティンクは90歳になっても指揮していました。長い指揮人生を送ることは、ずっと新しい勉強をしていかなければなりません。その新しい勉強というのは、例えば、新しい音楽や、これまでのマスターピースの傑作を40歳、50歳になった時に改めて、または新しく学ぶことが大切だと思います」

 

サミー・ラシッド「指揮者として長い旅だと思います。そのなかで言葉を使わない正しいジェスチャーでオーケストラに気持ちを伝えることを学んでいかなければならないと思います。なるべくシンプルに伝えることも大切だと思っており、10年先にもっとレパートリーを増やし、子どもの頃から好きだったオペラなどをたくさん勉強できればと思います」

 

ジョゼ・ソアーレス「音楽を作るのは、とてもダイナミックなことだと思います。そして長い旅だと思っています。そのプロセスの間に、具体的にどんな音楽家になりたいかは特に考えたことはありません。私たちは実際には音を出さない音楽家です。常に前進し、より良い自分になっていくことが重要です」

 

最後に、池田氏のリクエストで、リモートで参加していたカム、エドワーズ、メルクルからコンテスタントへのメッセージが送られ、1時間ほどの入賞者発表記者会見は結ばれた。