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第二次予選レポート

 

第二次予選は、第一次予選の翌日から2日にわたり行われた。新型コロナウイルス感染症の流行に配慮し、第二次予選も無観客開催となる。

 

まず、9月29日にジョゼ・ソアーレス(ブラジル)と石坂幸治(日本)、バーティー・ベイジェント(イギリス)、ルカ・ハウザー(ドイツ)が、そして30日にはサミー・ラシッド(フランス)とミハイル・メリング(ロシア)、米田覚士(日本)が登場した。

 

両日ともに、審査の前半には全員がチャイコフスキー《交響曲 第4番》と三善晃《交響三章》を演奏し、休憩を挟んでモーツァルト《オペラ「ドン・ジョヴァンニ」》から「ああ、神様、あの不道徳者はなんという非道な――あの人でなしは私を欺き」チャイコフスキー《ロココ風の主題による変奏曲》をソリストと共演した。

 

一人あたりの持ち時間は、前半・後半それぞれ25分ずつ。課題曲の4曲は、演奏する箇所が指定されている。第一次予選と同じく指揮者はマイクをつけて、演奏の途中に指示を出したり、何度もやり直したりするなど、雰囲気としてはリハーサルとほぼ同じと言える。

 

共演したのは、第一次予選と同じく東京フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:三浦章宏)、ソプラノの佐藤亜希子、そしてチェロの横坂源。歌唱する佐藤と管楽器奏者を除き、舞台上の演奏者はマスク着用。指揮者に対する東フィルの順応性は見事であり、指揮者の意図を忠実に表現しようとしているのがよくわかった。また、ソリストの佐藤と横坂はクォリティの高い演奏。共演者の安定した演奏が、指揮者の好演に貢献した。

 

 

通過者講評 音楽評論家:道下京子

 

第二次審査に挑んだのは7人。そのうち、ファイナルへの進出を決めたのは4人。第二次審査では、交響曲、現代曲、オペラ、そして協奏曲というように、幅広いジャンルの作品の演奏に挑む。指揮者としての適応性が問われる審査と言えよう。

ここでは、演奏順にファイナル進出者のステージを紹介したい。

 

ジョゼ・ソアーレス(ブラジル)は23歳、出場者のなかでは最年少だ。チャイコフスキー《交響曲第4番》の冒頭はやや硬さも感じられた。強弱の振幅は大きくはないが、全体を通して音のタッチが軽く、トーンも明るく、音楽の流れに推進力をもたらしているようにも感じる。歌いながらの指示や、三善《交響三章》の第2楽章における個性的なリズムの作り方も印象に残っている。

 

バーティー・ベイジェント(イギリス)は26歳。トリノ王立歌劇場管弦楽団での客演や、コロラド交響楽団のアシスタント・コンダクターを務めるなど、着実にキャリアを重ねてきた。一貫して安定した演奏を示した。《交響曲第4番》では、作品のもつ叙情性が自然に伝わってくる。細やかなタクトで、三善作品においても、様々な楽器の響き合う様が美しい。モーツァルト《歌劇「ドン・ジョヴァンニ」》のアリアにおける、ニュアンス豊かな表現は素晴らしく、テンポの緩急も大胆。情景が刻々と移り変わってゆく様子が目の前に浮かんでくるかのようだ。ソプラノやチェロのソリストにも指示を出すなど、制限時間ぎりぎりまで音楽作りを行なった。

 

サミー・ラシッド(フランス)は28歳。ミュンヘン国際音楽コンクール(弦楽四重奏部門)で優勝を飾るなどチェリストとして活躍。《交響曲第4番》冒頭から、音の要素を細かく表現し、深い陰影の音楽を創り出していた。三善作品では第1曲と第2曲とのコントラストが大きく示され、第2番の旋律や動機を鋭敏に描き出し、リズム表現も鮮やか。洗練された演奏であった。チャイコフスキー《ロココの主題による変奏曲》は通すだけで終えていたが、独奏チェロとの対話がさり気なく、典雅で明朗な楽想を見事に表わした。

 

米田覚士(日本)は東京藝術大学に学んだ25歳。積極的に音楽を作っていこうとする姿勢が強く感じられた。一度演奏を終えた後、米田は口頭で次から次へと指示を出していく。その後、音楽に動きが出て、演奏が大きく変化していくのがわかった。《交響曲第4番》も、彼が音の伸ばし方や切り方などの指示を出した後、表情が豊かになった。

 

 

第二次予選映像