NEWS

第二次予選レポート
●レポート
第一次予選から第二次予選へ進出したコンテスタントは、18名中9名。そのうち、海外からは3名、日本人は6名。女性は2名であった。そのキャリアは、学生からプロの指揮者までさまざま。第二次予選では、コンテスタントはリハーサルの形式で3曲の課題に挑む。演奏時間は、シューマン《交響曲第1番》の第1楽章前半と第3楽章終盤から第4楽章冒頭まで、そしてバルトーク《舞踏組曲》第1舞曲・第2舞曲を合計で25分間、そして休憩を挟んでシベリウス《ヴァイオリン協奏曲》ではソリストに川田知子を迎え、第1楽章前半を15分間。コンテスタントは、通して演奏したり途中で演奏を止めたりしながら、3曲それぞれキャラクターの異なる音楽をオーケストラと作り上げた。指揮へ俊敏に反応する東京フィルハーモニー交響楽団と、安定感のある川田の独奏ヴァイオリンは見事。このステージでは、ロマン派の交響曲と近代の舞曲、そしてコンチェルトへの対応力を試されていた。
通過者講評 音楽評論家:道下京子
●No.68 コルニリオス・ヴィクトル・ミハイリディス
ミハイリディスは1989年ギリシャ生まれ。ヨーロッパの著名なオーケストラとの共演をはじめ、2020年にマドリードのテアトロ・レアルで「魔笛」「中国のニクソン」の公演で指揮するなど、、プロフェッショナルなキャリアのある指揮者だ。自身の音楽をダイナミックで動きのある指揮を通して、表情豊かに作り上げていた。スコアを丁寧に読み込み、色彩に富んだ音を表現し、立体的な響きを創出。細やかさと奔放さを併せ持つバルトーク、そしてシベリウスでは内に秘めた情熱を巧みに表現。
●No.124 吉﨑 理乃
吉﨑は、東京藝術大学大学院に学んでいる。昨年度は、紀尾井ホール室内管弦楽団の指揮研究員として研鑽を積んだ。丁寧な演奏と慎重に指示を出す姿が印象に残っている。シューマンの第1楽章では、ほの暗さや重みを帯びた響きがしていた。その一方で、音楽の流れはいささか緩く感じられた。その後、「暗い感じがしたので、明るく」と彼女が指示を出すと、音楽の流れは良くなった。正確なタクトと音のバランスを心掛けているのが聴く者にも伝わってきた。
●No.171 岡崎 広樹
岡崎は、東京藝術大学では声楽科を卒業した後で指揮科に入学し、現在も研鑽を積んでいる。作品への熱い思いが伝わってくるような指揮であった。シューマンでは、途中で演奏を止めて、デュナーミクについて細かく指示を出し、自分の理想に近づくまでそれを繰り返していた。言葉の表現がわかりやすく、シベリウスでも、音のバランスやテヌートの弾き方などを彼がオーケストラに指示を出すと、それまでの演奏よりもメリハリが生み出された。コミュニケーション力にすぐれた指揮者だと思われる。
●No.209 ライリー・ホールデン・コート=ウッド
コート=ウッドは1997年イギリス生まれ。マスカット王立フィルハーモニー管弦楽団(オマーン)のレジデント・コンダクターを2023年まで務め、現在はBBCスコティッシュ交響楽団にも関わる。生彩に富んだ指揮でオーケストラをリードした。指揮が明確で、シューマンの第1楽章における情熱的な場面では、しなやかな脈動を生み出していた。第3楽章でも、シューマンの輻輳した情感を丁寧に引き出す。人間味あふれる音楽。彼の指示でオーケストラの演奏がはっきりと変わっていくのがよく分かった。
●第2次予選 独奏ヴァイオリン:川田知子氏
<フォト>
●No.56 喜古 恵理香
●No.90 高橋 達馬
●No.106 神成 大輝
●No.156 ニキタ・ソローキン
●No.176 村上 史昂